エラトーニア・C・メルポメヌス
こと座:呪歌学
授業内容:実技(歌唱/演奏)、理論(呪言詞/音階分析)、呪歌史
「杖、触媒、媒介……そんなもの、なにひとつ必要ないの。大切なのはアナタのカラダ、そしてそこから響かせる声だけ」
「何者も抗わせはしないわ。耳さえ聴こえるならね」
通称エラ先生、あるいはアオイドス・エラ。
年齢不詳。外見はうら若き乙女から母性溢るる中年女性まで、その日の気分と歌う楽曲により様々に違って見えるという。
羽の形をした両耳と、四肢を飾る鱗のような突起が特徴。
歌っているとき以外はいつもやや眠たそうな瞳をしている。
セイレーンの末裔、ムーサの生まれ変わり、オルフェウスの子孫、様々に噂されるがどれも荒唐無稽で証拠や根拠のある話ではない。
純粋な人間族ではないことだけは確かなようだ。
随分と長く学園の呪歌学教諭を務めているらしく、時折とんでもない人物を教え子だとのたまう。
授業は感覚派。興味関心才覚いずれかを持つ者には好評だがそうでなければ何を言っているのかさっぱり。
熱意やセンスや素質が足りず脱落する者も少なくはないが、やり遂げれば卓越した呪歌の使い手になれることは間違いない。
……一部エラの歌に魅了されて脱落する者もいるとか。
呪歌は己の魔力を体内で練り上げ、声という媒介で紡いで吐き出し、力ある言葉で編んだ詞に美しい旋律を纏わせて響かせ、聴く者の感情や思考を揺さぶり魅了し操る魔法である。
言葉が通じればより効果的だが、旋律や声そのものも意味を持つため耳さえ聞こえれば効力を発揮する。
「寝ても構わないわよぉ……美しい音楽は眠くなるって言うものねえ。地獄のケルベロスだって寝ちゃうでしょう」
「歌はなにもヒトの特権じゃないわあ、むしろ原初の言葉なのよぉ。鳥も、獣も、魚も、皆歌うでしょう。……だからね、卓越した呪歌には誰も抗えないの。本能だもの」
ちなみにエラトーニア・C・メルポメヌスというのはこの学園にいる間だけ名乗ることにしている偽名らしい。
本名は余程親しくなった相手にしか名乗らないという噂。
「やあだぁ、名前なんて知られたらなにされるかわかんないじゃなあい。名前なんてね、最も根源的な呪言なのよ」
