レスト・フェザーズで飯が食べられなかったのだが腹はかなり減っているので、美味いと噂のサンドイッチはあきらめて腹ごしらえをしようと適当な酒場に入った。
店内はそこそこに広く多くの人で賑わいを見せていたので街の食堂のような役割の場所かもしれない。
注文口はどこだろうと視線を彷徨わせていると賑やかで明るい声が聞こえてきた。
「トールト鳥の情報があれば冒険者にクエスト出せるんスから、この通りッスー!!」
声の方を見てみると陽気そうなエルフの青年が猫の獣人に頭を下げていた。
エルフの青年にはたくさんのピアスが付いていて明るい生活だと窺えるが相対的に猫の獣人からは冷ややかとも取れる態度を感じる。
「金貨2枚でいいわよ」
「ぐ…っ。もーちょい、安くなんないッスか…?オレの昼メシ代が…」
「いらないなら別にいいのよ?」
暫く考えこんだ青年は絞り出すような声で「買うッス……」と懐の布袋から金貨を取り出していた。
そんなやり取りを見ていて気がついてしまった。
青年はなんと言っていたか『トールト鳥のクエスト』と言っていなかったか。
今1番必要な素材、トールト鳥の肉が手に入ればレスト・フェザーズに持ち込んで絶品と噂のサンドイッチを食べられるのではないか。
そんな一心で獣人のウエイトレスと話し終えたエルフの青年に声をかけてしまった。
トールト鳥のクエストに自分も参加させてほしい、と。
「いいッスよー!人手があるに越したことないしありがたいッス!!」
快諾を示してくれたエルフの青年はアインと名乗った。彼は快諾をしながらもただ、と言葉を続ける。
「トールト鳥のいる湖に行く為にはサーペントの森を抜けなくちゃならないのでお兄さん1人だとちょっと危ないかもッス!」
確かに。普通に一人旅をするだけなら危険区域を避ければ問題ないが大きな森などにはヌシと呼ばれる存在が襲いかかってきたりする。
その為にパーティーを組んで冒険する者が多いのは一般的な常識として存在する。
「ギルドで即席パーティー募集かけてみるのもありッスかね!!」
それはいい案かもしれない。
話のついでにアインを誘ってはみたが「オレは戦い向いてないんで申し訳ないッス」と断られてしまった。
「参加できない代わりに、うちのギルドで募集出してくれていいッスよ!」と提案をもらったのでありがたく使わせてもらうことにする。
話を聞くとカルサイト新聞社団という情報に特化したギルドらしく人集めにはもってこいの場所だった。
あとは頼れる即席パーティーが作れればいいのだが…。
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登場人物 アイン・トゥズ