ケットに話を聞くと、どうやらその2人は魔法を駆使して引くくらいのスピードでトールト鳥を狩りつくしていったらしい。
また絶品サンドイッチから遠ざかってしまう情報を聞いたせいで傍目に見ても明らかに落ち込んでしまう。
見かねたケットがあたふたと慰めてくれるほどだった。
「まあでも、もしかしたらはぐれてる鳥がいるかもだし探そうぜ!」
「珍しくいいこと言うじゃない」
「珍しく、は余計だっつーの」
まるで夫婦漫才のようだとホッポとリピスに伝えれば2人は口をそろえて
「それだけは勘弁して」
「こっちこそ願い下げだぜ!?」
と声を荒げていた。息もぴったりなのにどうやら余計なことを言ったらしい。
「面白そうだから」とケットも鳥探しに協力してくれるそうで4人でとりあえず気を取り直して森の中へ入ることにした。
しばらく森を探索したところで頭上から気の好さそうな声がした。
「おやおや~?お困りかい旅の人?」
声を辿って上を向けば隣を歩いていたケットが小さく「うわ…」と漏らしている。
大きな紫色の帽子をかぶったその人は軽やかに目の前に着地すると人好きのする笑みを浮かべた。
「おやまあ!!キツネちゃんもいるなんて偶然だねえ!!」
「ぐぐ、偶然なわけあるかぁ!!!」
機嫌の好さそうなその人は短いピンク色の髪を揺らしながらルンルンと近づいてくる。
ケットは盾にするように自分の後ろに隠れてしまった。
「そんなにおびえなくてもいいじゃないか。かなしいよボクは!!」
「アルルと組むと碌なことにならないからいやだよ!!」
アルルと呼ばれたその人は終始ニコニコとしていて不思議な雰囲気をまとっていた。
つかみどころのない物言いのせいで男性か女性かも見分けるのが難しそうだ。
「言いがかりはよしておくれよ。
この前はたまたま追われたときに囮をお願いしただけだろう?」
「敵の中にけり落したのはアルルだろ!?!?」
「まあまあ、そんなことより」
魔法使いのような風貌のその人はピタリ、と自分たちが向かう先を指さして示す。
「たぶん君たちが探してる鳥、この茂みを超えた先にいると思うよ?」
え…?と茂みの向こうを見てから振り返ればそこにアルルの姿はなかった。
「急いだほうがいいかもね~」と声だけが響き嵐のように去っていく。
神出鬼没にもほどがある。
「よかったぁ。アルルは気分屋だからいつもオモチャにされるんだよぉ」
背中でケットが安心したように息を吐いていた。
しかし、そんなことはどうでもよかった。
諦めかけた絶品サンドイッチが茂みの先にいるのだ。
前を歩いていたホッポとリピスも頷いたので4人は茂みへと足を踏み入れるのだった。
登場人物 アルンシャート・アラシャーアイ