むかしむかし、あるところにとても大きくて怖い見た目をした魔物がおりました。
見た目がおどろおどろしいので近くの街だけでなく、魔物からも嫌われていました。
とうぜん、町で行われる盛大なお祭りにも参加できません。
「見た目がこわいだけで悪いこともしていないのに」
魔物はひとりで泣きました。うおぉーんうおぉーんと泣いていました。
お祭りにはうつくしい種族と言われている王さまたちも出席をします。
魔物は思いました。
「ぼくもうつくしい種族になれたら嫌われることなんてないのに」
世界には魔法というものがあるのです。
きっとできないことなんてないんだと、彼は魔法を勉強しはじめました。
朝も夜も、雨の日もシケイダの虫が泣き止まない日も勉強をしました。
しかし、悲しいことに魔物には魔法を使うための素質がありませんでした。
たくさん勉強をしたのに、魔法を使えないんじゃ意味がない。
魔物はひとりで泣きました。
うおぉーん、うおーぉんと大きな声で泣きました。
魔物は止まることなく泣き続けました。
うおぉーん、うおぉーん……。
ある日、魔物の家の扉がノックされました。
魔物は見た目のせいで友達も、家族もいませんでした。
そんな家がノックされるなんてきっと何かの間違いだ。
魔物はさらに悲しくなって、もっと大きな声で泣きました。
うおおぉーん。うおおぉーん。
その時、扉の向こう側から声がしました。
「そこにいるのね。ドアを開けてちょうだい」
うるさく泣いたせいで近所の誰かが文句を言いに来たのかもしれない。
それでも誰かに会えることは魔物にとってうれしいことだったので泣き顔のままドアを開けました。
ドアを開けて魔物は驚きました。
なんと、美しいと噂のお姫様がそこにいたのです。
うわさの通り、お人形のようにとてもきれいな顔をしていました。
「どうしておひめさまがここにきたんですか……?」
ついにぼくは討伐されてしまうんですか。
一人で死ぬのは嫌だったけど、最後に誰かが倒してくれるなら、それもいいかもしれない。
そう思って魔物は切りやすいようにお姫さまに首を向けました。
するとお姫さまはきょとん、としてとてもかわいらしい顔で笑いました。
「あなたが魔法に詳しいと聞いて教えてもらいに来たのよ」
そういうとお姫さまは持ってきた本を広げて質問をしてきました。
魔物は驚きながら、それでも自分の知っていることだったのでお姫さまに教えてあげました。
一つが解決したら次の質問、と お姫さまは魔物にずっと質問を続けました。
お城にはお姫様の質問に答えられる人はいなかったのでお姫さまはキラキラ質問を続けました。
魔物も誰かとかかわりたいと思っていたので生まれて初めての楽しい時間を過ごします。
気の合う二人はとても仲良しになってその後も幸せに暮らしたそうです。